G3: 因果推論・数理モデル
背景と課題
生命現象は、多数の要素が相互に影響し合う複雑なシステムとして成り立っています。細胞内の分子動態や個体の発生過程では、複数の要因が時間的に相互作用しながら状態が変化します。
このような現象を理解するためには、単なる相関関係ではなく、「どの要因がどのように影響を与えているか」という関係構造の解明が重要となります。
課題の本質
観測データから要素間の関係を推定することは本質的に困難です。
特に生命科学データにおいては以下の問題があります:
- 観測できる変数が限られている(部分観測)
- ノイズや測定誤差が大きい
- 観測される変化が必ずしも内部状態の変化を直接反映しているとは限らない
また、単純な相関解析では、間接的な関係や共通原因の影響を区別することができません。
具体例:短く非線形な時系列データからの因果推論
本研究では、観測データから直接関係を推定するのではなく、まず時系列データから状態構造を抽出し、その変化に基づいて要素間の関係を推定する枠組みを採用します。具体的には、時系列データにおける状態変化に着目し、時間的順序や状態遷移の制約を導入することで、単なる相関ではなく構造に基づいた関係の推定を行います。

従来の因果推論手法は、独立性仮定や十分な観測変数の存在を前提とすることが多く、生命科学の分野の実データには、適用が難しい状況です。数理モデル(常微分方程式モデルなど)で観測データと整合する形でシステムのダイナミクスを記述し、因果推論手法の研究開発に用いています。

研究の特徴
- 状態構造を介した関係推定の枠組み
- 時間的順序と状態変化に基づく関係の推定
- 数理モデルとデータ駆動型手法の統合
対象データと応用
本研究は、大腸菌の代謝モデルのシミュレーションデータや、単一細胞時系列データなどに適用されています。
これにより、細胞状態の遷移や制御機構を定量的に解析し、生命システムにおける関係構造の理解に貢献します。